どうもハジメです。
今回は公開されてもう2年以上経ってしまいましたが、「君の名は」について。
3.11にちなんで書いてみたいこともあったのでまとめてみました。
個人的には新海さんの映画は好きで過去作もすべて見ていて、君の名はも楽しみにしていた勢です。
「君の名は」の前に、新海さんの作品で好きなのはやはり映像美と音楽の組み合わせ、あと何とも言えない空気感がすごく好きでした。
映像に関しては特に田舎の雰囲気を表現している部分が好きでしたね。
「秒速」であれば、貴樹が電車で移動する一連の夜の雪のシーン。「子ども」であれば線路でバケモノと遭遇するまえの田舎の道と空気感の表現はたまらなく好きでした。
ストーリーはある程度大人になってから接したということもあって、感情移入できる部分とできない部分がありますが、一人で夜のんびり見ると心地よい。
ちょっと、悲しい展開が歯がゆさはあったかなー。という人間です。
それは本題です。
「君の名は」について。
映画館で見ていた私は、広告の前情報を込みで、実はそこまで期待していった訳じゃなかったですが、
君の名はを見て、エンドロールが流れたあたりはもう席から立ちたくなかったですねー。
なんかずっと浸っていたいなーと思う映画でした。
そして、新海さんのベスト版であり、よくぞこの終わり方にしてくれた。
内心、新海さん頼むよ、頼むよ。
って思いながら見ていましたね(笑)。
今回はその中でも、まとめておきたい項目を挙げて紹介したいと思います。
- 広告うまくなかったですか?(SNSの存在)
- 映画ストーリーの系譜(3.11の存在)
- リアルの中の非現実(現実に目が向き始めた)
- 新海誠ワールドパッケージ(川村元気さんの力?)
結構、自分の中ではある点において象徴的な映画だと思っているので、書いておきたかった。
この要素が含まれて大ヒットにつながったと考えています。
1 広告うまくなかったですか?
皆さんもテレビなどで目にしたと思いますが、あのCM。RADWINPSの「前々前世」と入れ替わり映画を思わせるやつ。
あれを見た私は、もともと新海さんの映画のテイストを知っていたので、今度はそういうテーマの話か。
と思って、タイミングがあえば映画館に行ってみようかなという程度でした。
ただ、新海さんの映画にしてはポップなテイストに仕上がっていそうな雰囲気を感じたので、見てみたいという気持ちは高かったように思います。
そして、実際に映画館で見たあとにこのCMのことを思い返すと、クリエーターとして感じたのは「うまいなー」という感想でした。
何がうまいかというと。
まず、CMにおいて関心を得るために十分なキャッチーでわかりやすいテーマだけを抜き出していること。
映画館で見た時の期待を超える展開を予想していたかのような、まさに手のひらに転がされたような感覚でした。
おそらく見た人はCMで見た、一見するとありきたりでちょっと倦厭されてしまうテーマよりも、
深くただの少年少女の恋愛ドラマを超えた展開があることを誰かに言いたくなると思う。
自分だけがこのドラマの良さを知ったかのような感覚にもなりましたね。(かくゆう私もそうでした)
この感覚がミソで、まんまと公開直後から騒がれていたSNSでの口コミの拡大を、映画自体の良さを超えて相乗効果があったと考えます。
本当に上手くはまりましたね。
多分、作品の構成もちょうどよくハマったとは思いますが、本当によくできている。
思わずSNSにつぶやくたくなる。私もつぶやいてしまいましたしね。今の時代に合わせたプロモの手法はすごいですね。
2 映画の系譜と3.11の前後
つづいて、映画の系譜から「君の名は」への流れに関して。
典型的なストーリーシンデレラストーリー、英雄が世界を救う、大きなハンディキャップからの素敵な出来事などなど、いろいろありますが、総じて結構特殊な状況や環境に身を置く主人公などが中心にストーリーが展開します。
そちらの方がキャッチーで、見てみたいと思うし、魅力的に見えるからそのようにしているんだと思います。
一方で、新海さん自身がおそらくもともと意識されていたことだと思います。
それが何かというと、
ごくありふれた人物の日常をただ描くというところ。
もちろんこう言った映画は他にもあるし、今回の君の名はもただ日常を描いた訳ではないが、根底に息づくものがここにあると思っている。
ドラマのためのドラマを作るというよりは、現実の中のドラマを描くという部分がベースにありつつ、今回の映画では、ボーイミーツガール、震災を思わせる災害、などを表にわかりやすい形で配置しているように見える。
言ってみれば、
リアルの中に非現実的なことが起こることの方が、
今の時代においてより新鮮に見えたり、
フィクションを超えたインパクトがある
ということをこの映画が証明したと思う。
補足的に同時期に放送されていた「世界の片隅に」も同様だと思います。
それがなぜ、流行ったかに関しては、3.11の震災があるような気がしてならないです。
日本人があの津波の映像を見たときに、正直、映画を超えていると思った人も多いのではないでしょうか?
現実は、人が作った物語よりもはるかに、残酷で、容赦無く、私たちにその恐ろしさを突きつけてきました。
私も思いましたが、フィクションが嘘っぽく見えて、インパクトに欠けるような感覚もあったものでした。
たまたまか、狙ったかわからないですが、このタイミングで新海さんの持っていたものが時代のニーズとばっちりハマった一作だったのかなと思っています。
3 リアルの中の非現実
こちらに関してもっと掘り下げてみると、いろんなコンテンツで人気が出てきているものを見ていくと共通することが見て取れる。
おそらく、3.11を経て、ユーザーの潜在的な感覚が変化をして、様々なコンテンツにその感覚が息づいているんだと思っています。
例えば、
テレビ番組:終電逃した人の自宅までいくやつとか。あるテレビ局のクレイジーな方がアマゾンに行くやつとか。そもそもクレイジーな人を特集した番組など。
全て、素人さんの現実の中を追いかけること自体が作られたものよりも、人を惹きつけるようになった表れかなと思います。
ドラマ:典型的なドラマ展開を逆手にとってストーリーを紡ぐ作品が増えてきたような気がしますね。自分が最近見ていたものでいうと、「半分青い」「3年A組」「獣のになれない私たち」などなど。
王道展開のように見せて、それを裏切ったり、残酷に表現しようとしている部分もあるが、全て現実に起こりうる(起こせうる)範疇に収めて作成されている感覚がある。
4 新海誠ワールド
最後はやはり、
色彩と言葉の紡ぎ方(感情の紡ぎ方)の新海さんらしさが、一般レベルで伝わる形でパッケージされたことなんだろうなと思います。
個人的には昔から好きだった監督さんだったのもあって、メジャーになって嬉しいような、少し悲しいような感覚ですね。
個人的には色彩の使い方がすごく好みで、光の表現の仕方と色彩感覚がいいですね。
自分が印象派の絵画が好きなのと何か関係があるのかわからないのですが、それと似た感覚になることありますね。
グラフィックに関してはリアルよりも、より光の雰囲気などを綺麗に表現されていると思うのですが、自分としてはそれがなんとも気持ちいいぐらい美しく感じますね。
ここに関しては、これでもかというぐらいにそのままで突っ走っていますね。(作画監督さんの力もあってか、過去作よりもひと回りアニメーションとしてのクオリティーが上がった印象がありました。)
一方で、セリフ(モノローグ)まわし。秒速ぐらい儚げな雰囲気を匂わせておらず、要所要所で使われていましたね。全体的に悲しげにさせないように、いい意味で新海さんらしさを丸めているなーと思いました。
その上で、感情の紡ぎ方(ユーザに対しても含む)もそうですね。秒速でもありますが、付かず離れずを作らせたら他に出るものはいないんじゃないですかね。
見ている人の気持ちをぎゅっとさせられるような男女の心のやり取りはすごいですね。
ここは、そのまま新海さんの良さを伸ばすようなチューニングをしているように思いました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
先日、3.11もあったのもありますが、
もともと「君の名は」については書いてみたいと思っていたのでこのタイミングになりました。
おそらく映像評論家さんのような方からすると、映画史などのもっと深く知っていろと言われるかもですが。
メジャーなレベルで数値的な結果も歴史に残るようなものを叩き出した作品を、改めて個人的な目線でまとめてみたくて書きました。